今日は為替市場にとって歴史的な一日となりました。ロンドンの再度の爆発(ポンド売り)、そして人民元の切り上げ(円買い)。ロンドンの爆発はそれしか無ければ大いに市場のテーマになったでしょうが、人民元の切り上げという大ニュースの前では完全にくすんでしまいました。
なぜ人民元が切り上げされると大パニックなのか?なぜ日本円が買われるのか?そんな素朴な疑問が生まれると思います。理由を解説します。
経済成長著しい中国の通貨である人民元はこれまでドルペッグ制と言って為替相場が事実上固定されていました。事実上、というのは本来自由に売り買いされる外国為替市場において、中国政府が戦略的に市場を管理して上下3%までしか相場が変動しないように操作しているからです。そんなことが可能なのかという疑問も生まれるでしょうが、市場心理として3%以上の相場変動には操作が入る、と分かっていれば市場参加者は3%以上の値動きを追うことはしませんし、それ以前に人民元相場で儲けようという心理が働かなくなります。これで事実上の固定相場が完成します。
なぜ人民元相場を固定する必要があるのか?中国の経済はまだ規模も小さくシステムも未熟で世界的なマネーゲームに翻弄されるとひとたまりもないからです。10年ほど前に韓国とタイで通貨危機があったのを覚えていますか?流通量の少ないマイナー通貨である韓国ウォンやタイバーツに欧米ヘッジファンドが目を付け大規模な売り攻撃を浴びせ、通貨の価値が暴落、国家的な経済危機に発展した事件です。中国がこの二の舞を踏んでしまうとせっかく成長し続けている経済が沈没してしまう危険があるからです。
今後も事実上の固定相場は続きますが、通貨バスケット方式として2.1%の上昇を容認する、と今夜発表したのです。人民元は不当に安すぎる、と欧米や日本からの圧力が常に掛かっていますから更に2.1%の相場変動を容認するということはそのまま2.1%の上昇を意味します。これが今夜起こった人民元の切り上げです。
人民元が切り上げられると何が起こるか?中国の輸出企業にとっては国際競争力が減退します。同じ物を同じ価格で売るにしても人民元が2.1%上昇すれば外国企業の買い値がそのまま2.1%上がるわけですから。かつて1ドル=360円で商売をしていた日本の輸出企業が現在の100円ちょっとの相場に至るまで競争力を維持するのにどれだけの努力をしたか、想像するに難くありません。
逆に中国の輸入企業は有利になります。中国の通貨価値が上がるということで、中国国内の資産も外国に対する相対的価値が上がります。中国国内に最も投資をしている国はどこか?言うまでもなく日本です。日本企業が中国国内に持っている資産の価値も人民元の上昇によって上がるわけです。中国に資産を持つ日本企業の含み益が増える→関連企業の株価上昇→株の買いを入れるために日本円を用意する必要がある→日本円が買われる、という図式です。
そんな風が吹いたら桶屋が儲かる的理論を別にしても、日本円は世界的にはアジアの代表通貨として認識されています。そのため日本のファンダメンタルズに関係の無い事象でも日本円が上下します。今回の人民元切り上げはもちろん、北朝鮮のミサイル実験などでも影響を受けます。
人民元ショック、とも言える今夜の円急騰(=ドル、ユーロの対円相場暴落)はこれまで何度も要人発言で為替相場を揺さぶってきた中国の実力が如何なく発揮された証拠と言えるでしょう。
逆に言えば、これはパニック的な円買いです。日本の経済指標に何か好感の持てるものが出たわけでもなく700兆円の巨額赤字を垂れ流している借金王の通貨であることに変わりはありません。すぐに相場は巻き戻されますので今夜中に外貨を買うことの出来る人は迷わず買えば数日以内に確実に利益が出ます。
rates.gif左は私がいつも利用しているリアルタイムレートの画面です。青い下線を引いているところに注目です。ドルもユーロも対円で2円以上値を下げています。つまり円高です。ポンドはロンドンの爆発もあり、人民元ショックの影響も受けての2円暴落です。私は為替ウォッチングを始めて10年近くなりますがこういう値動きを見るのは極めて珍しいです。ポンドはそもそも値動きが大きい通貨ですが、メジャー通貨であるドルとユーロがこれだけ動くというのはよほどのことでないとあり得ません。それだけの大事件が今夜起きた、と認識していただけましたでしょうか。